- 「ラウンドアップ」や「グリホサート」ってどんなもの?遺伝子組み換え作物とどんな関係があるの?
- 安全性や健康被害は報告されているの?
このような疑問にお答えします。
本記事の内容
- 遺伝子組み換え作物は3種類
- 超強力な農薬「ラウンドアップ」
- 発がん性物質「グリホサート」
- 世界中で禁止が広がっているグリホサート
- 日本では残留基準値を大幅に緩和
遺伝子組み換え作物を知っていくと、
「ラウンドアップ」や「グリホサート」といった言葉を聞くことがあると思います。
はじめは聞きなれない言葉に思わず「なにそれ?」となりますよね。
実はラウンドアップ(グリホサート)は遺伝子組み換え作物と、セット商品なんです。
たとえば、「ドラえもん」でいう
ドラえもんとのび太くらいセットなんです。
あのドラえもんというアニメの面白さを知るにはのび太が必須ですよね。
遺伝子組み換え作物を理解するには、ラウンドアップが必須なんです。
それではさっそくいきましょう。
遺伝子組み換え作物は3種類
まずはさらっと遺伝子組み換え作物の種類を。2分ほどお付き合いください。
遺伝子組み換え作物は大きく分けると以下の3種類があります。
①殺虫性(Bt毒素)遺伝子組み換え作物
一つ目に、殺虫毒素を持つ細菌(Bt)の遺伝子が組み込まれていて、作物そのものが殺虫成分を持っているものがあります。
害虫がこのとうもろこしのどの部分を食べても、とうもろこしは害虫を殺すことができます。
虫が食べたら死んでしまうものをわたしたちが食べて、安全性は大丈夫なのかという指摘があります。
虫を殺してしまう毒素と同じものが、普段食べているコーンスープや、シリアルに入っていると思うと恐ろしいですよね。
ちなみに「Bt遺伝子組み換えとうもろこし」はアメリカでは農薬として登録されています。
②除草剤耐性遺伝子組み換え作物
二つ目に、除草剤をかけられても枯れない遺伝子が組み込まれているものです。
除草剤(じょそうざい)とは?
植物(雑草)を枯らすために使われる農薬のこと。
農家は畑全体に除草剤をまくだけで、まわりの雑草だけを枯らすことができ、作物は枯れずに残ります。
つまり、農家はこの除草剤を自分の畑にまくだけで、雑草を抜く手間を省くことができます。
③DT(求められる特性の)遺伝子組み換え作物
三つ目に、市場で求められる性質をもつように遺伝子が組み換えられているものがあります。
望むような形質を持たせるために、特定の遺伝子を起こしたり、眠らせたりします。
たとえば、より緑色の濃いレタスや、より赤色のトマトなどです。
ほかにも、現在のアメリカ市場に出回っているものに、下記のものがあります。
- 褐色変化しないリンゴ
- ピンク色のパイナップル
- レインボーパパイヤ
- 色とりどりのズッキーニ
このようなDT遺伝子組み換え作物は、「Bt毒素も入っていないし、除草剤耐性もないので害が少ないのでは?」と思えます。
しかし、組み換えられた遺伝子がどのような危険をもっているかまだ分かっていません。
もしかしたら作物の奇病の遺伝子を目覚めさせてしまっているかもしれません。
以上の3種類が遺伝子組み換え作物にはあります。
これら3種類の遺伝子組み換え作物の中でもっとも栽培が盛んなのは、
②除草剤への耐性を持ったものです。
遺伝子組み換え作物の9割ちかくを占めています。
よって遺伝子組み換え作物の体への影響を理解するのに、遺伝子組み換え作物に使われている農薬(除草剤)をセットで知っておくことが大切です。
とはいっても、「農薬って、病気や虫から作物を守るために必要なものじゃないの?」「そもそも、日本ってそんなに農薬使ってる?」との気持ちもあるでしょう。
実は日本は“世界トップレベルの農薬大国”といわれています。
使用量が多いのはもちろんですが、使われている農薬の毒性が強く、農薬による健康破壊がいま問題になっています。
毎日食べている食品がそんな農薬まみれだったらと思うとぞっとしますよね。
ここからは、遺伝子組み換え作物に使われる農薬(除草剤)について深堀りしていきましょう。
超強力な農薬「ラウンドアップ」
除草剤耐性遺伝子組み換え作物の代表的な物は、とうもろこし、大豆、てんさい、菜種、綿です。ラウンドアップレディとよばれるものですね。
これら除草剤耐性遺伝子組み換え作物に使われる農薬の大半が「ラウンドアップ」です。
【ラウンドアップとは?】
- モンサント(現バイエル)という企業が製造している農薬。
- 植物を枯らすための主成分が「グリホサート」と呼ばれるもの。
- グリホサートに対して耐性を持つように遺伝子を組み換えられた植物は、グリホサートが撒かれても枯れない。そうでない自然の植物は枯らしてしまう。
ラウンドアップを撒けば雑草の処理に時間と手間がかかりません。
つまり、簡単に収穫作業の効率を上げることのできる夢のような農薬といえます。
人体に何も影響を与えないのなら、本当に夢のような話かもしれません。
ただ、そうはいきません。
発がん性物質「グリホサート」
ラウンドアップにはあらゆる植物の成長に必要なアミノ酸生成をストップさせてしまう作用があります。
つまり、あらゆる植物を枯らしてしまう超強力農薬ということです。
そんな猛毒のラウンドアップ、もっとも懸念されているのが発がん性とされています。
- 2015年3月、WHO(世界保健機関)の中の専門機関IARC(国際がん研究機関)によって「グリホサート」が発がん性物質「2A」に分類された。
IARCはさまざまな物質の発がん性を1~4段階でランク付けしている。
2はAとBの2つに分かれている。
- 1 … 確実に発がん性がある
- 2A … 発がん性の疑いが強い
- 2B … 発がん性が有力
- 3 … 発がん性の疑いは弱い
- 4 … 発がん性はない
- アメリカではラウンドアップを使用したことで、がん(非ホジキンリンパ腫)になったという男性がモンサント社を相手取って裁判を起こした。2018年8月、その主張は認められ、モンサント社はこの男性に2憶8900万ドル(約320憶円)を支払うよう命じられた。
- 2019年3月にはカリフォルニア州の裁判所は、グリホサートががん(非ホジキンリンパ種)になる原因との訴えを認め、モンサント社を買収したバイエル社に対し、8080万ドル(約89億円)の支払いを命じた。
- 2019年5月カリフォルニア州の裁判所は、グリホサートががん(非ホジキンリンパ種)になる原因だったと訴えた夫妻の主張を認めた。
バイエル社に対し20憶5500万ドル(約2200億円)の支払いを命じた。
グリホサートは発がん性以外にも様々な健康障害の研究結果が報告されています。
- カリフォルニア大学オンディーヌ・S・フォン・エーレンシュタインらの研ではグリホサートなどの農薬と自閉症との関係についての調査を発表。
- 出生前および出生後1年目までにグリホサートなどの農薬に暴露した子どもは、暴露していない子どもに比べて自閉症スペクトラム障害(ASD)になるリスクが高いことが示された。
- ブエノスアイレス医科大学教授のアンドレス・カラスコ博士率いる国際的科学者チームはグリホサートをごく低濃度に薄め、カエルや鶏の胚に注入した結果、奇形が発生することを実験で確認。
- 「研究室での実験結果は、妊娠中にグリホサートにさらされたヒトに生じた奇形と一致している」と述べている。(その際のグリホサート濃度は2.03ppm)
- ワシントン州立大学マイケル・スキナーらの研究チームは、グリホサートに暴露したラットの子孫は前立腺・卵巣・腎臓の疾患や出生異常がみられた。
- 第2世代では肥満にくわえて、精巣・卵巣・乳腺の疾患の著しい増加がみられた。2代目の母親は3分の1しか妊娠しなかった。
- 第3世代ではオスの前立腺の疾患が増加、メスは腎臓の疾患が増加。
- 日本では、2019年4月12日、農民連食品分析センターが輸入される小麦から、グリホサートが検出されたと公表。
下記の表は大手パンメーカーの食パンから検出されたグリホサート量です。
これに対して政府は
「小麦の残留基準(30ppm)以内」であるため、安全だと主張しています。
本当に安全なのでしょうか?
なぜならグリホサートの残留基準値は、理由も不明確なまま5ppmから30ppmと6倍に緩められていたからです。
この値は、体が小さいお子さんが毎日パンを食べたときに、どのような影響が出るのかまで、考慮しているのか分かりません。
大手パンメーカーの食パンだけでなく、外国産の小麦を使った製品(市販のパンやラーメン、パスタなど)や学校給食のパンも危ないといわれています。
なぜなら、日本で消費されている小麦の85%は輸入もので、アメリカ産小麦の97%からグリホサートが検出されており、カナダ産は100%だから。
なぜそんなに多くのグリホサートが検出されるのでしょうか。
収穫直前にラウンドアップを撒くことで、ほかの植物が枯れて収穫がしやすくなるためです。(プレハーベストという)
よって、時間と手間を省きたい農家は積極的に使うようになるのです。
このような状況のなか、世界ではグリホサートへの対策が進んでいます。
世界中で禁止が広がっている「グリホサート」
多くの国や地域で、グリホサートの使用削減や禁止に動いています。
では日本のグリホサートへの対策はどのようなものでしょうか?
もう少し、詳しくみていきましょう。
日本では残留基準値を大幅に緩和
世界中がグリホサートを制限し始めているなか、日本の政府は世界の流れに逆行しています。
何も対策をしないどころか、残留基準値を大幅に緩めています。
なぜ、残留基準値を緩めたのでしょう。
残留基準値を大幅に緩めたのは、輸入する作物からいつかグリホサートが検出されることを察知し、それに備えるための対応だったのではないか、といわれています。
日本の政治家は、わたしたち国民の健康を考えているのでしょうか。国民の命よりもアメリカとの関係や貿易促進を優先しているのではないでしょうか。
私たち消費者はこれらをふまえて自分の思考や行動を選ぶ必要があります。
さらに遺伝子組み換えを理解するのにおすすめ
- ドキュメンタリー映画
『Genetic Roulette(遺伝子組み換えルーレット~わたしたちの生命のギャンブル~)』
- この映画のプロデューサー(ジェフリー・M・スミス)は、17年間、遺伝子組み換えについ徹底的に調査していました。
- 映画では遺伝子組み換え作物がどのようにしてアレルギーや自閉症、自己免疫性疾患、流産、出生異常などを引き起こすのかを明らかにしています。
- 遺伝子組み換え作物の危険性から、生活のなかで実践できる対策まで提案しています。
まとめ
わたしたちは消費者として自分の目や耳を使ってしっかりと商品を見定めないといけません。
最近は高級食パンブームですが、値段が高いからよいものを使っているとは限りません。
健康に良いイメージを謳っている全粒粉の食パンでもグリホサート値が高く検出されています。
値段やイメージ、誰かが良いといったもので商品を選ぶのではなく、きちんと自分で調べることが大切です。
食パンに限らず、これからはわたしたち一人ひとりが身の安全を自分の意思で選択する時代に変わっています。
参考文献・書籍・映画
・週刊金曜日オンライン(2019年8月26日)
・UNSTOPPABLE あきらめない 愛する子どもの「健康」を取り戻し、アメリカの「食」を動かした母親たちの軌跡
著:ゼン・ハニーカット
訳:松田紗奈
・映画「遺伝子組み換えルーレット」